Show notes
「千両役者」とは、江戸時代に1年で1000両を稼いだ看板役者をいう。当時の歌舞伎の座元と役者の雇用契約は1年間で、毎年旧暦11月には新たな顔ぶれに入れ替わった一座による顔見世(かおみせ)興行が行われた。各座への役者の振り分けは座元の談合により毎年9月に決まった。座元にとって人気役者を確保できるかは1年間の興行を左右する一大事で、話し合いが不調ならくじで決めたという。大物役者のギャラが上がるのも成り行きである。毎年秋の顔ぶれ刷新で長く人気を保ってきた江戸の歌舞伎だが、自民党もこれにならったのか。かつての第1次安倍晋三(あべ・しんぞう)政権から福田康夫(ふくだ・やすお)、麻生太郎(あそう・たろう)政権への1年ごとの首相交代を思い出させる「9月恒例の総裁交代」の再来である。昨年9月の総裁選で圧勝、顔見世も高支持率だった菅義偉(すが・よしひで)首相だったが、コロナ対策の後手後手がたたって続投を断念する1年後となった。総選挙を迎える自民党としては、すべてをリセットする奥の手、看板役者の据え替えである。菅首相の不人気を総選挙の追い風にしたかった野党としては当てが外れ、総裁選をメディア乗っ取りと文句もつけたかろう。しかし過去の自民党や民主党の短命内閣の連続が、結局は政権交代をもたらしたことも国民は忘れていない。昨年の総裁選で自民党が圧倒的多数で選んだ看板役者の技芸のほどは十分に...

